歌仙『海境を来る』の巻
執筆・葛城 軽天
オ その一瞬羽化する蝉の虹を吐き 瀬間 文乃
白雨を乗せて湖(うみ)よりの風 小池 舞
むく犬の横切りゆくを追いかけて 葛城 軽天
唐草模様のボレロ羽織れる 篠見 那智
月形の和菓子は徐々に欠けてゆき 舞
瓢(ふくべ)に酒をたつぷりと汲み 文乃
ウ 少年は心決めたりハロウィーン 那智
ヘヴィメタルの彼女抱きしめ 軽天
窓辺にてかざせば透ける血判状 文乃
泥かぶりたる人の悲しき 舞
大地震東京中が電話して 軽天
わが裡にある異説質せり 那智
トナカイの角にかかりし寒満月 文乃
雪像割れて銃の緊張 舞
海境(うなさか)を来る風聞を忘るべし 那智
法然院に弦楽器鳴る 川野 蓼艸
人類の歴史の終わり花は告げ 軽天
身を踊らせる春飛魚の群れ 文乃
ナオ シャボン玉こどもの顔を膨らませ 舞
胸ポケットにスプーンおばさん 軽天
水鏡不意に過ぎゆくものは何 那智
とんでもないもの踏んでしまつた 舞
堕天使の翼の跡をなぞりたる 文乃
蕪村愁いて岡にのぼれり 那智
疲れたる体に朝の光射し 軽天
列柱の影声の怪しき 文乃
フラスコに沸騰している赤と黒 舞
いつのまにやら足りぬジョーカー 軽天
十三夜葉切傷舐め世の端に 那智
蓑虫入れて飴の空き缶 舞
ナウ 行く秋に転生児童坂下る 文乃
麺棒吊し口ずさむ詩句 那智
火星へのスペースシャトル猿を積み 軽天
ティラノザウルスうたた寝の頃 文乃
日の原の人も校舎も花吹雪 那智
春に佇む旗となるまで 軽天
※ナオ二句目「スプーンおばさん」は一九八三~八四年にかけて放送されたNHKの同名アニメの主人公で、スプーン大に縮んでしまう特技を持つ。
※ナウ一句目「転生児童」は、ダライ・ラマの生まれ変わりの少年のこと。
(平成十七年七月二十四日首尾 於・西荻三ツ矢酒店)
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100535/5167354
この記事へのトラックバック一覧です: 歌仙『海境を来る』の巻:





コメント