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2005年11月28日 (月)

歌仙『山のくじらと海のいのしし』の巻

          夏生忌(村野夏生宗匠追悼連句)

               捌・坂手 手留

           木犀のこぼれ落ちたる寂光土                         市川 千年

               たまゆらの声雁去りし闇                             川野 蓼艸

              同時代走りつづけて水澄みし                         篠見 那智

               上がり框に団扇捨ておく                             小池 舞

              月昇るアヴァンギャルドを朱に染めて             瀬間 文乃

               あり余りたる知の忿怒 喝!                      坂手 手留

           ぞうさんを追いかけてゆく夏野原                   ほしおさなえ

               大統領に届くマンゴー                                葛城 軽天

              イエスマンイエスウーマン日本幸ふ                あんの透子

               炎に巻かれ影の抱き合ふ                               軽天

              恋文を貝殻に入れ蓋をする                               蓼艸

               耳朶に残れる汐の音の美(は)し                   舞

              存念を問はれてをりき寒満月                            那智

               スノーチェーンの鎖切断                                文乃

              とき放つサソリピラニアイグアナも                    千年

               霞ヶ関に軍靴再び                                         軽天

              しんとして透けてゆきます花のなか                   さなえ

               ブラックジャックによろしくと四月馬鹿            透子

ナオ        物干してふり向けばほら山笑ふ                         舞

               水面高きニューオーリンズ                             那智

              傍らに海軍航空兵たりし夫                               仝

               くだらぬ思想針で突き刺せ                             軽天

              緊急に天使新聞発刊す                                     文乃

               うなづくばかり祖母は縁側                             仝

              溶けだした二人地球の熱となる                        軽天

               硝子体剥離ボクサーの愛                               手留

              病みそめし『山のくじらと海のいのしし』           那智

               しほさゐをききまどろんでゐる                       さなえ

              月明の熊野三山滝が鳴る                                  那智

               高層階に待つ稲光                                         千年

ナウ        蓮の実の飛んで沈黙(しじま)を深めたり           文乃

               弦きしみゐる風のうらがは                             蓼艸

              地震(なゐ)来ると地下の鯰の騒ぎたち             透子

               小半(こなから)酒を舐め舐め生きる              舞

              亡き人と夢中落花に語らひて                            透子

               ヒポポタマスのおぼろおぼろに                       文乃

          (首尾・平成171022日 於・西荻窪三ツ矢酒店)

※『山のくじらと海のいのしし』……村野夏生氏の書かれた童話作品。

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2005年11月26日 (土)

歌仙『猿の目顔』の巻

                           捌・日高 玲

  一茶忌に上野の猿の目顔かな           日高 玲
    大道芸の息の白々                坂根 慶子
   ジグソーのピースはピチと嵌められて       小池 舞
    ボンボン時計の捻子(ネジ)が切れたよ     山地 春眠子
   酒も酌む里居暮しの十六夜              登坂 かりん
    蜻蛉(とんぼ)の国が動き始める            葛城 軽天
  鳥渡る山襞(やまひだ)深みゆく頃に          穴澤 とこ
    親爺の集ふダンス教室                  軽天
   七色のヴェールは床に投げられて             慶子
    乳房含めば漆黒の闇                   舞
   太古より行方不明の意識あり               軽天
    レジスタンスとテロのあわひに          川野 蓼艸
   ご近所に敦盛草をお裾分け                かりん
    江戸切子には月が似合って               慶子
   「すんませんチャーハンは今品切れです」        軽天
    小路の奥に犬ころが吠え                 蓼艸
   癒え早し試歩にまとわる花吹雪              とこ
    復活祭に揃へたる服                   かりん
ナオ E=mc2(イーイコールエムシージジョウ)春の雲     軽天
    渇いた骨が水を呼ぶとき                 舞
   喚声にボクサーゆらと立ちあがり             蓼艸
    またも外郎(ういろう)ねちゃりんことす         とこ
   大統領金閣寺にておもてなし               軽天
    牛に乗らうか馬を引かすか                玲
   雪女らし膕(ひかがみ)をくすぐるは            春眠子
    諸手に重き白菜の尻                    玲
   頒布会個人情報横流し                   かりん
    右往左往の空の警笛                   とこ
   完璧の月光として吾を刺す                 春眠子
    緞帳(どんちょう)わけて鳥屋師(とやし)登場     慶子
ナウ 蝦夷富士の全山紅葉(もみじ)また黄葉(もみじ)    春眠子
    誰も行けない湖がある                  舞
   向うから覗く友あり徳利提げ                舞
    社翁(しゃおう)の雨が肩に優しい            慶子
   歪(いびつ)なるものもよきかな花の影          玲
    階(きざはし)すっと離れゆく蝶              かりん

             首尾・平成17年11月19日 於・上野東京文化会館

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2005年11月23日 (水)

空飛ぶワニのサラバンド

上体を反らし 空を見つめる

巨大なワニの背中は 天空への階段

昇る途中で バランスが崩れた

突然宙に浮き 空を飛び始めるワニ

しっかりとつかまろう

止まらない 風を置き去りにして

弾丸より速く

膨張する鋼鉄の剣

魔法をかけられた 熱い体で

本能のまま

異次元の扉を開けろ

本能のまま 飛び込んだら

絡みつく衝動 息が乱れる

魂が加速する その先を求める

昇りつめた瞬間 爆発する雪のようなDNA

力無く 墜ちてゆく体

僕は世界を見失い

大地の上で

目覚めた

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2005年11月20日 (日)

2005年11月19日

 月1の草門会に行ってきました。今回上野にいらっしゃったのは、山地春眠子さん、穴澤とこさん、登坂かりんさん、日高玲さん、小池舞さん、坂根慶子さん、僕、そして後ほどもう1人……でした。

  今回のお捌きは、日高玲さん。時雨忌で捌きをやるので、今回はその予行演習、ということでした。

 発句~第三

  一茶忌に上野の猿の目顔かな          日高 玲

   香具師の講釈息の白々               坂根 慶子

  ジグソーのピースはぴちと嵌められて       小池 舞

 お捌き日高玲さんの発句。「目顔」というのは、「人をじっと見る顔つき」のことだそうです。なんだか猿と一対一になっているようで、面白い発句ですね。

 脇は、坂根慶子さんです。発句にぴったりを付けて、なおかつ「香具師」というレトロなものを持ってきました。

 第三は、小池舞さんです。「香具師の講釈」のイメージがジグソーパズルになりました。

 ウラ1句目~6句目

 ここからは特に良い流れなので、一気に6句紹介します。

  鳥渡る山襞深みゆく頃に             穴澤 とこ

   親爺の集うダンス教室             葛城 軽天

  七色のヴェールが床に投げられて       坂根 慶子

   乳房含めば漆黒の闇              小池 舞

  太古より行方不明の意識あり          葛城 軽天

   レジスタンスとテロのあはいに         川野 蓼艸

 穴澤とこさんの情趣あふれる情景句。とこさんは場面の切り替えのために、時々こういった趣のある情景句を出してくれるのです。

 でも、次の句で、僕が茶化してしまいました。こんな風にわざと「はずす」のが僕は好きなのです。

 「ダンス」なので恋句に進んでもよいところですが、「親爺とは恋したくない」と言わんばかりに、慶子さんはヴェールを床に投げつけてしまいました。

 次の句はもう親爺とは関係がないので、舞さんが恋に進みます。乳房を含んでいるのは、もちろん赤ちゃんではありません。

 ここで、本日来られないはずだった川野蓼艸さんが登場。先日入院なされたそうで、みんな心配をしていたのですが、病み上がりという感じはありましたが、まずまず元気そうで、一同安心しました。

 蓼艸さん、舞さんの「乳房」の句に大喜びでした。

 その句に、僕がいつものように謎めいた句を付けました。遙かな昔になくしたけれど、DNAの中に隠れている「意識」が、本能的な愛の行動によって目覚める……というイメージです。

 蓼艸さんはそれを「何か見失っているものがある」という風に解釈されたのでしょうか。テロとレジスタンスは紙一重、という句になりました。「あはい(あわい)」というのは、「間」という意味の古語です。

 ナオ1句目~4句目

  E=mc2(イー・イコール・エムシー・じじょう)春の雲    葛城 軽天

   乾いた骨が水を呼ぶとき                    小池 舞

  喚声にボクサーゆらと立ちあがる               川野 蓼艸

   またも外郎(ういろう)ねちゃりんことす            穴澤 とこ

 僕がまたも変な句を出しました。「E=mc2」というのは、アインシュタインの相対性理論の公式です。「春の雲」は付け合わせの妙、という以外に深い意味はありません。

 そこへ舞さんの句。野ざらしの骨が雨に打たれます。

 すると、ボクサーが復活し、ねばっこい「外郎」のイメージへとつながっていくのでした。

 とこさんの「ねちゃりんこ」という擬音はとてもユーモラスで可愛いですね。

 ナオ11句目

  完璧の月光として我を刺す                         山地 春眠子

 「完璧の月光」という表現が面白いですね。「我を刺す」というのも、春眠子さんらしくて、綺麗なのに恐ろしい感じがして、何ともいえない味があります。

 ナウ5句目~挙句

  歪(いびつ)なるものもまたよし花の影              日高 玲

   階(きざはし)すっと離れゆく蝶                    登坂 かりん

 お捌き玲さんの花の句は、ポエジーたっぷりで、格調のある句です。

 そして、かりんさんがすっと軽やかに付けて、一巻めでたく終了です。

 タイトルは「歌仙『猿の目顔』の巻」となりました。

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