魔法使いブラン~巨大いん石衝突を回避せよ!!の巻~第4回
エストの森の広場では、ブランがすでに神妙な面持ちで待っていました。どうやら、魔法学校時代の同級生二人はあらかじめ相談していて、最初からノワールがタロウたちをここに連れてくることになっていたようです。
全員が輪になって芝生の上に腰を下ろしました。魔法使い二人とタロウたちの大議論の始まりです。
最初に発言をしたのは、ボブでした。
「ブランの魔法で、木材をミサイルにしてぶっ放すってのはどうだ?」
得意げなボブに、しかしブランは力無く首を振ります。
「ぼくの魔法では、ミサイルみたいな複雑な機械は作れないんだ」
次に提案をしたのは、タロウです。
「村全体をダイヤモンドに変えちゃうのはどうかな?」
ブランが口を開くよりも先に、チェンが、
「それも無理だ。相手は核爆弾なみの破壊力を持った巨大いん石なんだ。ダイヤなんだろうが何だろうが粉々さ」
と否定し、そのまま考え込んでしまいました。
「ノワールの魔法でどこかに飛ばしちゃえばいいんじゃない?」
と、今度はキャス。しかし、これにはノワールがちょっとあわてました。
「オイオイ、無茶言うなよ。いくらオレの魔法だって、直径一キロもあるいん石をすっ飛ばしたりできねえって!」
みんな一様にため息をつきました。
タロウは失意のあまりに空を見上げました。するとそこには、真昼にもかかわらず、とても明るい光を放っている星がありました。
(月……かな?)
最初はそう思いました。しかしそれは月よりも一回り小さいようでした。
それが何かということに気づいた時、タロウはその場に凍りつきました。
「おい、どうしたんだ?」
空の一点を見つめたままぴくりとも動かないタロウの様子を不審に思い、ボブが声をかけます。
「空に何かあるのか?」
ボブがそう言うと、みんな一斉に空を見上げました。
太陽のすぐ近くで、白い星が異様なほど力強い輝きを放っています。
チェンの顔が見る間に真っ青になりました。
「いん石だ! もうあんなに近くに迫ってるなんて!」
「もうイヤ! だれかあれを止められる人はいないの?!」
キャスが絶望的な悲鳴を上げた時、ブランはとっさにある人物を思い出しました。
「いる! いん石を止められる人がたった一人だけいる!」
ノワールもすぐにその人物の存在に気がつきます。
「オレたちの先生だ!」
「魔法使いの先生」と聞いて、タロウが真っ先に思い浮かべたのは、「山奥に住む仙人」というイメージでした。ところが、ノワールの「セ・サンパ」の魔法でタロウたちが連れてこられたのは、なんと南の島でした。目にしみるような真っ青な空、ギラギラと照りつける太陽、真っ白な砂浜と、どこまでも透き通った海……。どこからどう見ても、「山奥」の神妙さとはほど遠いものでした。
「ほら、あれだよ」
ブランがマシュマロのような指で示した先に、一軒の小屋があります。
それは、どこからどう見ても、「海の家」でした。軒下には、「氷」ののれんさえかかっています。
「ごめんくださーい」
タロウは縁側から声をかけました。
ドタドタドタッ
騒がしい足音とともに、一人の老魔法使いが姿を現しました。
「うほーい! ひさしぶりのお客さんかのう?」
年老いた魔法使いはキョロキョロとタロウたちを見回しました。ブランやノワールたちよりも小柄なその体は灰色で、全身しわくちゃでした。ただし、この老魔法使いの場合は、「しわの数だけ元気がある」という雰囲気で、全身から生命のエネルギーがみなぎっているようでした。
「おひさしぶりです、グリ先生」
ブランが、老魔法使いの前に進み出ました。
「なんじゃ、ブランとノワールか。もうからん話じゃて」
グリ先生はつまらなそうに言いました。
「で、この子どもたちは?」
「じつは先生……」
言いかけたブランの言葉を、グリ先生がさえぎります。
「ま、事情はさておき、中でかき氷でも食べんかね?」
グリ先生がウインクすると、子どもたちはいん石のことも忘れて、大はしゃぎで縁側に上がりました。
-つづく-
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