魔法使いブラン~巨大いん石衝突を回避せよ!!の巻~第7回
数分後、3人の魔法使いと4人の子どもたちは、再び居間へと集まっていました。時計の短針はすでに「2」を回っています。
室内は張りつめた空気で満ちています。深夜にもかかわらず、全員の意識が覚醒していました。
全員、だまってチェンの第一声を待っています。
「いん石をはね返す」
チェンは言いました。
予想もしていなかった発言に、みんな一瞬、かれが何を言っているのかが理解できませんでした。
「どうやっていん石をはね返すの?」
タロウがふしぎそうな声で質問しました。
「ゴムではね返す」
「何だそれ? まさか冗談言ってるんじゃないだろうな?」
軽蔑しているかのようなボブのセリフに、しかしチェンは動じることなく、言葉を続けます。
「エスト湖をブランの魔法で巨大なゴムの塊にする」
チェンは、まるでジグソーパズルを一片ずつはめていくようにして話を進めていきます。
「そんな、ゴムなんかで……」
タロウが失望したようにつぶやきますが、チェンはさらに続けます。
「ブランはいつも、魔法は意志のチカラだと言ってる。ブラン、直径1キロのいん石をはね返す巨大なゴムを作ることはできる?」
チェンがブランの方をうかがいます。
「できる……と思う……」
ためらいを含んだ声で答えたブランですが、
「いや、やるしかない。やる」
と、すぐに決意の表情で言い直しました。
「でも、どうやっていん石をエスト湖に落とすの? このままだと、いん石はモンド村の中央に落ちてくるのよ?」
今度はキャスが疑問を口にします。
「地球は自転している、って理科で習ったろ?」
チェンは野球のボールを取り出すと、マジックで黒い点を書き込みました。
「地球全体が、こう回る……」
言いながら、チェンは左の手のひらにのせたボールを右手でゆっくりと横に回します。
マジックでつけた黒い点が一周しました。
「これが一日だ」
「その、自転と何の関係があるんだよ?」
チェンの真意がつかめないボブはいらだちを覚えているようです。
しかし、チェンはボブの問いにすぐには答えず、再びマジックのキャップを開けて、さっき書いた黒い点の隣、少し離れた位置に白い丸を書き込みました。
「この黒い点がモンドの村。こっちの白い点が、エスト湖だ」
チェンはみんなにボールが見えるようにしながら、説明を続けます。
「もし、このまま何もしなければ……」
と言うと、チェンはポケットからビー玉を一つ取り出して、
「いん石はモンド村に落ちる」
ビー玉を黒い点にあてがいます。
「でも、いん石を上空で一定時間止めると、その間に地球は自転して……」
チェンは左手の上のボールを少しだけ横に回しました。そして、
「いん石はエスト湖に落ちる」
今度はビー玉を白い点にあてがいました。
「つまり、いん石を止めるのがワシの役目というわけじゃな」
「グリ先生を上空のいん石近くまで運ぶのが、オレの役目だ」
グリ先生とノワールは、それぞれの自分の役割をもう理解していました。
「ふむ。一定時間いん石を止めるということじゃが……直径1キロメートルのいん石か……。ワシの魔法で止められるのは……5秒、といったところじゃが?」
「すいません。20秒止めてください。ぼくの計算では、いん石をエスト湖の中心に落とすためには、20秒間止める必要があるんです」
さらりと言ったチェンの言葉に、老魔法使いはしばらく考え込んでしまいました。しかし、
「わかった。やってみよう。弟子たちも頑張るのじゃからな」
と言って、グリ先生はウインクしました。
これで会議は終了。
と思われたのですが、最後にキャスが声を上げました。
「待って! エスト湖をゴムにしちゃったら、そこに住んでいるお魚さんたちはどうなっちゃうの?!」
これはチェンも予想していなかった質問でした。
-つづく-
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100535/10089048
この記事へのトラックバック一覧です: 魔法使いブラン~巨大いん石衝突を回避せよ!!の巻~第7回:





コメント