魔法使いブラン~巨大いん石衝突を回避せよ!!の巻~最終回
いん石が再び動き出すのを確認すると同時に、チェンは手に持っていたストップ・ウォッチを止めました。
「ジャスト二十秒! やってくれたぜ!」
チェンの計算では、地球の自転から取り残されたいん石は、これで落下地点を変え、エスト湖に落ちる予定になっています。
一瞬にして地表に近づいたいん石は、いよいよその巨大さを誇示し、ついにあたりはいん石のつくりだす影で薄暗くなってしまいました。真っ暗にならなかったのは、いん石自体が燃えているので、その炎によってあたりが照らされているためでした。
燃えさかるいん石の表面が、空一面を覆いました。経験したことのない暴風が、森の木々を一瞬にしてなぎ倒します。
「今だ!」
チェンが叫ぶと同時に、
「湖よゴムになれ! イル・フェ・ボー!」
ブランは全魔法力を込めて杖をふりました。
青い光が水面を覆うと、湖は瞬時に巨大なゴムのかたまりとなりました。
その中心に、巨大いん石が突き刺さります。
ものすごい衝撃と轟音が、周囲に走りました。もしも穴を掘って隠れていなかったら、タロウたちはみな、爆風でバラバラに吹き飛んでいたでしょう。
いん石は、ぶ厚い「湖のゴム」を突き破ろうとするように、深く深く突き刺さり、その勢いは少しも衰えませんでした。
タロウたちは、確かにいん石の「重圧」を感じていました。
いん石の圧倒的なほど強大な破壊力が勝つか、命を賭けて故郷を守ろうとするかれらの強い「心のチカラ」が勝つか……。
「守ってやる!」
ボブは湖面に突き刺さるいん石をにらみつけながら、強く祈りました。
「パパ……ママ……!」
キャスはモンド村でずっと一緒に暮らしてきた家族と、村民たちのことを想い、強く祈りました。
「はね返せ!」
チェンは、自分を信じて一緒に戦ってくれている仲間たちの未来のために、強く祈りました。
しかし、ブランに限界が近づいています。
魔法力の使いすぎで、すでに息はぜえぜえと荒くなり、目がかすれて、今にも見えなくなってしまいそうでした。
湖のゴムが、次第にきしみ始めます。
そして、ついにブランの魔法がとけてしまいました。
ゴムの湖が、ただの湖に戻ります。
しかし次の瞬間、
「いん石よ、シャボン玉になれ!」
タロウが強く叫びました。
「イル・フェ・ボー!」
ブランが、最後の力をふりしぼって杖を振ります。
巨大な湖のゴムを突き破って、あたり一面を破壊しつくそうとしていた巨大いん石は、一瞬にして巨大なシャボン玉になってしまいました。
太陽の光にてらされて七色に光る巨大なシャボン玉の美しさに、みんな我を忘れて見入りました。
しかしその巨大なシャボン玉は、すぐに、
バチン
と、大きな音をたて、湖の上ではじけてしまいました。
膨大な量の石けん水が湖に降り注ぐと、あっという間に洪水が起こり、あたりは水浸しになってしまいました。しかし、幸い、タロウたちのいる湖岸は、湖の周辺の他の場所よりも高い位置にあったので、かれらは洪水に飲み込まれずにすみました。
そこまで見届け終えると、みんな一斉に、今まで止めていた息を吐き出して、穴の中へと倒れ込みました。
「ああ、しんどかった……!」
ボブは、もう動けない、といった風に目を閉じました。
「パパ……ママ……」
キャスは泣きながら笑っています。
「やれやれ……オレは頭が固かったかな?」
チェンは空を見上げたまま、あきれたようにつぶやきました。
「やった……!」
タロウは空を抱きしめるようにして、笑顔で両腕を広げました。
疲労のあまり、全員がすぐに眠ってしまいました。
ブランは魔法力の使いすぎでかすれている目で、みんなの寝顔を見ながら、モンド村もみんなも無事であることを喜び、微笑みました。
「そういえば、ノワールとグリ先生はどうしたんだろう?」
あたりを見回しました。
「オレたちなら無事だぜ」
声は、空からでした。そこにはグリ先生を背負ったノワールが、いつもよりふらふらとして頼りない感じでしたが、辛うじて浮かんでいました。
いん石を止めた後、気を失って落下していった二人ですが、地面に激突する寸前に意識を取り戻したノワールが、最後の力をふりしぼって、再び飛翔したのです。
ゆらゆらと着地すると、ノワールは背中で眠っているグリ先生をそっと地面におろします。
そして崩れ落ちるようにして、自分も仰向けに地面へと倒れました。
「勝ったよ、ノワール!」
ブランは、友と喜びを分かちあおうとして、微笑みました。
しかし、ノワールは疲れ切った表情で言いました。
「ああ、確かに勝った……。でもな、オレたち魔法使いにはまだ仕事が残ってるんだぜ」
言われてすぐに、ブランは気がつきました。
ブランは、お魚さんたちを救出するためにことごとく水槽にしてしまった大きな建物を、もとに戻さなくてはいけませんでした。ノワールとグリ先生は、水槽の中のお魚さんたちを全て湖へ帰してあげなくてはいけません。
それに何よりもまず、シャボン液で泡だらけになっている湖をきれいな水へと戻してあげる必要がありました。
全部終わるには、丸一日以上かかりそうでした。
「ウエ~」
うんざりした声を上げると、ブランはその場に倒れ込んで、寝込んでしまいました。
-おわり-
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コメント
こんにちは 軽天さん。
なんだかものすごくお久しぶりな感じがします。私だけ???
『魔法使いブラン』お疲れさまでした。
今一気に5話読ませていただきました。一気に読めるってすごいですね。
ふう、隕石をとめられて(?)良かったです。
綺麗なシャボン玉が目に浮かびます。(^^
でも後片づけまで考えるとは、うーん、地球に優しい軽天さんですね!うーん素敵です。
最後の「ウヘ~」がなんだか可愛いです!
お疲れさまでした。
これからもがんばって下さいね!
投稿 風のシズク | 2006年6月15日 (木) 18:55
Bonjour!
おひさしぶりです。
童話『魔法使いブラン』を読んでくれてありがとうございます。
「童話」と言いつつ割合にハードボイルド(?)な展開になりましたが、楽しんでいただけたでしょうか?
またお話ができたらUPしますので、よろしくお願いします!
投稿 Keiten | 2006年6月20日 (火) 18:44