「あヽノ会」という連句会で連句を巻いてきました。以下、その様子をダイジェスト風に紹介します。
西荻窪の三ツ矢酒店の2階に、最初に集まったのは、川野蓼艸さん、粉川冬人さん、村田実早さん、瀬間文乃さん、小池舞さん、そして僕、の6人でした。
この日の捌きは蓼艸さんでした。
発句~脇
「発句は、那智さんが桂信子の追悼のために作ったのがあるから、それで行く」
と蓼艸さん。
誰も誰も居らずなる野や蝶もなし
ただ真白なるノート晩春
篠見那智さんの淋しげな春の句に、蓼艸さんが、気落ちして何も書けぬ、という脇を付けました。
ウラ1句目~4句目
耳当てて葡萄酒かもす音を聞く
実早さんが出したかわいらしい句は、恋の呼び出しにもなっています。
そこで僕は、
白き素肌と赤き唇
と、ワインにかけて赤と白を出しました。しかしこれは、
「ちょっと直接的だなぁ」
と蓼艸さん。あえなくボツになりました。結局ここでは、
かりそめのごとささめきのごと
と、遅れてやって来た那智さんの、ほのかに甘い恋句が付きました。
そしてこれに付いたのが……
白き肌赤き唇紗に透けて
蓼艸さんが、ボツになった僕の句を見事に夏の句に蘇らせて、付けてくれたのです。
「さすが、『川野再生工場』」
と、嬉しげに言ったのは、冬人さん。実は、『川野再生工場』というのは、僕が以前、蓼艸さんが巧みに僕や他の人の句を手直ししてくれるのを評して言ったことばなのですが、それを冬人さんがエラクお気に召されたようで、以来、度々連発していらっしゃいます。
ウラ7句目~8句目
子育ての飴買ひに出で冬の月
コンクラーベで生るる教皇
実早さんが出した月の句は、実は幽霊の句なのだそうです。金沢の方にある民話で、子供を身ごもったまま死んでしまった母親が、子供を育てるために幽霊となって飴を買いに行くのだとか。いいお話ですね。
コンクラーベの句は、文乃さんです。今回、新法王が生まれたのは春でしたが、まあ、コンクラーベで法王が生まれるのは今回だけではないので、冬に付いてもいいでしょう。
ちなみにこの句は、当初、「法皇」となっていたのですが、僕が、
「マスコミや公的機関などは『法王』と言っているようですけど、日本のキリスト教会は正式には『教皇』だと言っているようですね」
と言ったら、じゃあ教皇にするか、ということになりました。
それからついでに、
「『コンクラーベ』は『コンクール』の語源ですね」
と、まことに些細なマメ知識も疲労しておきました。知ったかぶりしすぎですね。
ナオ7句目~8句目
恋文は紙ヒコーキでやってくる
蓼艸さんがご自分で恋句を付けようとしたところ、文乃さんが遅れて一句出しました。こっちの方がいいなあ、ということで、文乃さんの紙ヒコーキの恋句が採用になりました。
これに付けたのが、舞さんです。
紅茶に混ぜるストリキニーネ
『ストリキニーネ』というのは、薬品の名前のことだそうです。少量なら神経刺激剤として有効だそうですが、多量に接種すると猛毒だとか。舞さんらしい(?)、文字通り毒のある句ですね。
ナオ11句目~12句目
自画像に月描き足して寂びしかり
とまどひつつも蛇穴に入る
実早さんの、味のある月の句に、舞さんのかわいらしい蛇が付きました。
ナウ1句目
我が友の自裁の菊を捨てきれず
当初、冬人さんは上五を「乱倫の」とやっていたのですが、蓼艸さんは、乱倫はちょっとなあ、と言い、上のかたちにして採用しました。
「さすが、『川野再生工場』」
と、冬人さんもご満悦なようすでした。
ナオ5句目~挙げ句
故郷の地球に花が滲み出し
と、僕が出した花の句を『川野再生工場』さんが、
故郷の地球を花は覆いたり
よりスケールの大きい句にして採用してくれました。
水の彼方を逃げる逃げ水
那智さんがさわやかに挙げ句を付けて、1巻終了。タイトルは、歌仙『誰も誰も』の巻、になりました。桂信子さん追悼の1巻でした。
歌仙『誰も誰も』の巻は、蓼艸さんが推敲し終えて正式なものをいただいたら、全編掲載します。お楽しみに。
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