2005年10月10日 (月)

A LETTER TO TRUE

『トゥルーへの手紙』

 この映画は、写真家であるブルース・ウェバーが監督を務め、自身の愛犬「トゥルー」へ手紙を書くというかたちで、9.11の同時多発テロ以降の混迷する世の中に生きることへの不安、愛することの大切さを訴える記録映画です。

 とても美しい映画でした。ここで言う「美しい」というのは、映像のことではありません。確かに、この映画は写真家が監督をしただけあって、映像にも隙がない美しさがあります。しかし、それ以上に「愛」が美しい。

 一本の筋が通ったストーリーがある映画ではないのですが、ブルースは手紙の中でトゥルーに対して様々なエピソードを語っていきます。ガンにかかった恋人と共に暮らした俳優ダーク・ボガードの話、ガンとエイズの診断を受けたウェーバーの友人をエリザベス・テイラーが訪れた話、そして、同時テロの際に救助活動をした犬や、ブルースの愛犬で、仲の良かった犬の死を悼んだ犬などの、犬にまつわる様々な話……いろいろなエピソードが美しい音楽と共に語られていき、その合間に歌や詩、名犬ラッシーの名場面、キング牧師の演説などが挿入され、見ている者の心を揺さぶり続けるのです。

 この映画の中で、ブルースは彼よりも前の世代の写真家であり、ベトナム戦争を9年間追い続けたラリー・バローズの言葉も引用しています。その一部で彼はこう語っています。

私は、あからさまに残酷ではない写真で人々の苦痛を見せたいのです。そしてできることなら、戦争がもたらす悲劇を人々に伝えたいのです。

 ブルースは、ラリー・バローズのこの姿勢をこの映画で受け継いでいるといえます。というのは、この映画はまさに反戦の映画なのですが、しかし戦場を直接描くことをほとんどせず、その周囲にある美しいもの、悲しみ、愛を描くことによって、人々に愛することの大切さ、平和の尊さを訴えているからです。

 最後に映画の中で引用されたものの中から、ジョン・レノンの言葉を記しておきます。

War is over...if you want it.(戦争は終わる……あなたが望むなら)

『トゥルーへの手紙』2004年・アメリカ)

監督・脚本:ブルース・ウェバー 制作総指揮:ナン・ブッシュ

※同時に写真展も開催されています。

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2005年5月23日 (月)

『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』

<あらすじ>

 ボードレール家の子どもたちは、とても仲の良い三姉弟妹。14歳の長女ヴァイオレットは、リボンで髪を結ぶと途端にひらめきを発揮しいろいろなものを発明する才能の持ち主。12歳の長男クラウスは読書家で、彼の頭の中には大人顔負けのありとあらゆる知識がある。1歳の次女サニーは、鋭い勘と、何でも噛み砕く頑強な歯を持っている。

 ある日、彼らが海辺で遊んでいると、そこへ銀行家のポーが現れる。ポーは彼らに、彼らの自宅が火事になって両親が死亡したことを告げる。全焼した自宅を見て、3姉弟妹は自分たちが突如として孤児となったことを知る。両親には莫大な財産があったが、未成年である彼らは、それをすぐに相続することができない。かくして彼らは成人するまでの間、「後見人」に預けられることになった。

 最初に連れて行かれたのは、彼らの「遠い遠い親戚」であるオラフ伯爵の屋敷。遺産管理人としてのポーから3姉弟妹の紹介を受けたオラフ伯爵は、喜んで彼らの後見人役を引き受ける。しかし、実はオラフ伯爵はとてもずる賢く欲張りな性格で、彼らの遺産を狙っていた。後見人のはずのオラフ伯爵から命を狙われることとなった3姉弟妹は、力を合わせ、智恵と勇気で数々の危機を乗り越えてゆくのだが……。

 とても面白い、いい映画でした。

 ただし、ストーリーを楽しみたいのであれば、原作の児童小説「世にも不幸なできごと」シリーズを読むことがベターな選択といえるでしょう。僕自身は同シリーズを1冊も読んだことはないのですが、これまでの経験と映画を観た感じから、これは断言できます。すぐれた小説を映画化して成功する例もありますが、多くは原作のダイジェスト的なストーリーになってしまうのが常なのです。同映画も、観た限りではそのような印象でした。

 しかし、それでも、この映画は観る価値があるいい映画なのです。それは原作にはない大きな魅力が、この映画にはあるからです。それは、ジム・キャリーの存在です。彼は、遺産を狙うオラフ伯爵の役を演じるのですが、ずる賢く、誇大妄想的で、そしてちょっとおマヌケな悪役オラフ伯爵をパワフルかつコミカルに演じ、それは見ているだけでも楽しく、圧倒的な存在感を持っていて、観客はオラフ伯爵の登場シーンが終わると、すぐに次の彼の登場を期待するのです。

 ジム・キャリーにコミカルな悪役の演技をやらせたら、彼の右に出るものはいないと思います。思えば、『バットマン・フォーエバー』の時の悪役リドラーの役も素晴らしく、主役のバットマンの存在感を食ってしまうほどのものでした。(最近は文章表現に対していろいろとやかましく言われるらしいので敢えて伏せ字にしますが)彼は××××じみた演技が、非常に上手です。まるでCGを使っているかのようにぐにゃぐにゃ動く表情と、笑わずには見られない滑稽なアクション、そして矢継ぎ早にまくしたてるマシンガン・トークを駆使し、彼は映画の中で与えられた役をすべて彼独自のものに作り上げて、観客を彼の虜にしてしまうのです。

 ジム・キャリーを見るだけでも、この映画は観る価値があるといえるでしょう。

『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』2004年・アメリカ)

スタッフ/監督:ブラッド・シルバーリング 原作:レモニー・スニケット 脚本:ロバート・ゴードン 音楽:トマス・ニューマン

キャスト/オラフ伯爵:ジム・キャリー レモニー・スニケット():ジュード・ロウ ヴァイオレット:エミリー・ブラウニング クラウス:リアム・エイケン サニー:カラ・ホフマン、シェルビー・ホフマン(2人1役) ミスター・ポー:ティモシー・スポール ジョゼフィーンおばさん:メリル・ストリープ

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