A LETTER TO TRUE
『トゥルーへの手紙』
この映画は、写真家であるブルース・ウェバーが監督を務め、自身の愛犬「トゥルー」へ手紙を書くというかたちで、9.11の同時多発テロ以降の混迷する世の中に生きることへの不安、愛することの大切さを訴える記録映画です。
とても美しい映画でした。ここで言う「美しい」というのは、映像のことではありません。確かに、この映画は写真家が監督をしただけあって、映像にも隙がない美しさがあります。しかし、それ以上に「愛」が美しい。
一本の筋が通ったストーリーがある映画ではないのですが、ブルースは手紙の中でトゥルーに対して様々なエピソードを語っていきます。ガンにかかった恋人と共に暮らした俳優ダーク・ボガードの話、ガンとエイズの診断を受けたウェーバーの友人をエリザベス・テイラーが訪れた話、そして、同時テロの際に救助活動をした犬や、ブルースの愛犬で、仲の良かった犬の死を悼んだ犬などの、犬にまつわる様々な話……いろいろなエピソードが美しい音楽と共に語られていき、その合間に歌や詩、名犬ラッシーの名場面、キング牧師の演説などが挿入され、見ている者の心を揺さぶり続けるのです。
この映画の中で、ブルースは彼よりも前の世代の写真家であり、ベトナム戦争を9年間追い続けたラリー・バローズの言葉も引用しています。その一部で彼はこう語っています。
私は、あからさまに残酷ではない写真で人々の苦痛を見せたいのです。そしてできることなら、戦争がもたらす悲劇を人々に伝えたいのです。
ブルースは、ラリー・バローズのこの姿勢をこの映画で受け継いでいるといえます。というのは、この映画はまさに反戦の映画なのですが、しかし戦場を直接描くことをほとんどせず、その周囲にある美しいもの、悲しみ、愛を描くことによって、人々に愛することの大切さ、平和の尊さを訴えているからです。
最後に映画の中で引用されたものの中から、ジョン・レノンの言葉を記しておきます。
War is over...if you want it.(戦争は終わる……あなたが望むなら)
『トゥルーへの手紙』(2004年・アメリカ)
監督・脚本:ブルース・ウェバー 制作総指揮:ナン・ブッシュ
※同時に写真展も開催されています。
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